「ルールを守ること」で「気持ち良さ」は生まれない

日本の人たちの一般的なメンタリティでは、ルール(契約)を守ることが大切で、それを守れることが「大人」だと判断されている傾向があると、私は感じています。

しかし、実際のところ、私は「ルールを守らない」諸外国の人たちの処し方の方が「大人である」と感じることが多いわけです。

一例をあげてどういうことなのか、説明していきたいと思います。


2010年から2012年にかけて、私は香港にある世界的に名の知れた欧州系の銀行のプライベートバンキング部門に勤めていました。プライベートバンキング部門とは、現金資産2億円から口座を開設することができる富裕層向けの投資部門です。

当時一人だけ日本人のお客様がいらして、その方選任の翻訳士として雇われたのが私でした。

勤め始めて一か月もすればわかることですが、仕事量は圧倒的に少なかったです。何しろお客様は一人しかいませんから、朝2時間程度アナリストレポートとプレスリリースの翻訳をしてしまえば、あとは席に座っているだけという業務でした。

しかしそれだけでは一日過ごすことができないので、私は途方に暮れてしまいました。

そこで私はあることを考えつきました。

翻訳の通信教育を申し込み、教材を職場へ持ち込んで、毎日4~5時間、みっちりと翻訳の勉強をして時間を過ごすことにしたのです。

職場が銀行だったので、翻訳分野は国際金融経済を選びました。

職場は夕方6時までが勤務時間でしたが、私は5時に帰っていました。

仕事がないことはわかりきっていたからです。

私の上司はBBC(イギリスで生まれ育った中国人)でしたが、彼は私を自由にさせていました。

なぜか?と言えば、私の仕事量がほとんどないということは、二人ともわかり切っていたからです。

それなのに、「労働契約があるだろう!」とか、「勤務時間中に業務に関係ないことをするな!」などというナンセンスを言うことの無意味さを、私たち二人はお互いに理解していたのです。

だからこそ、上司は何も言わず、私がやりたいようにさせていたのでした。

やりたいようと言っても、職場で金融経済の翻訳の勉強をしているだけで、間接的には業務に貢献することですから、別に悪いことをしているわけではありませんよね。

しかし、日本の職場はそういうわけにはいかないというのが、私が帰国して知ったことです。

日本人は本当に四角四面で、「べきべき」「ねばならない」思考に雁字搦めで、物事の本質を見失っていることにすら気づきませんね。

例えば上述のような仕事現場(仕事量が少ない)というのは、わりと多くある状況だと思います。仕事量はないけれども、人は一人置いておかなくてはならない。外国であればそこは互いに含み合って、ある程度自由にさせるだけの度量があります

しかし日本の企業では、さまざまなルールや規範に縛られて、「仕事もないのに、他のことは一切できず、ただ席に座っているだけ」という無意味で非人間的な状況を押し付けられるのでしょう。

そのようなことは人間の心理に害にこそなれ良いことは一つもありませんし、限りなく非人間的な、人を人とも思わない行為と言って差し支えないと思います。

従業員を「人間として」尊重していれば、そのようなひどい状況を見て見ぬふりをして放置するなどはあり得ないことだからです。

先述の銀行から日本人のクライアントが離れたとき、上司が内々に私に話をして、「これ以上このポジションを維持できなくなった」と伝えてきました。

そこで私は、「承知した。今まで2年間ありがとう、私としても助かった」と伝え、「また何かあったらよろしく頼むな」と言い合って私は職場を円満に後にしたのでした。

私は今でもこの上司に感謝しているのです。

仕事量がないなりに私を置いてくれて、給料をもらいながら資格を取得することができた。2年間、私の生活は安定し、資格を二つも取ることができたのだから、私としては本当に良い職場として記憶に残っているのです。

こういうセンスの良さというものを、私は多くの日本人に伝えたいと思っています。

人生や仕事はもっと柔軟であっていい

色々なシチュエーションがある中で、お互いに生身の血の通った人間として、どれくらい「気持ち良く」仕事ができるかということは、「べきべき」「ねばならない」というルールを守ることにあるのではなく、「人間として互いを思いやる」ところにあると、私は確信しています。

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