過去10年くらいの間に日本でも「自己肯定感」という言葉が浸透し、自己肯定感を高めることの重要性が認知されてきたように感じています。
ですがその一方で、「自己肯定感」という言葉の定義がまったく曖昧で、多くのケースにおいて「ナルシシズム(自己愛性障害)」とごちゃまぜに認識されているような気が強くしていました。
言葉をしっかりと定義することの大切さは今までも書いてきましたが、正確な意味での「自己肯定感」を理解・認識している方が少ないと感じるため、この記事では一度しっかりとこの言葉の定義を行いたいと思います。
まずは「自己肯定感の高い人」とよく混同される「ナルシシスト」について説明します。
ナルシシストとは
ナルシシストとは簡単に言ってしまえば、「自分がすべて」という人のことです。
- 子供が言う事を聞かないのは私を困らせる為、子供はもっといい子になって私を楽にすべきだ
- レジの人の態度が悪いのは私への当てつけ、即刻改めるべき
- 忙しくて彼女をしばらく放置したら「別れたい」と言われた、ショックだしそんなの許せない、彼女は僕に謝罪すべき
- 俺は浮気しても許されるべきだけど妻が離婚したいというのは許せない
- 友達の結婚式が○月△日、私その日都合悪いのになぜ都合を合わせてくれないのだろう?
- 私が賞を取るのは当たり前、だって「私だから」、他の人が賞を取るのは運が良かっただけ
ざっと書いてみましたが、こういう思考回路を持った人たちのことを「ナルシシスト」と言います。
心理学者の加藤諦三先生は、「ナルシシストとは他人という現実が存在しない人のこと」と仰いましたが、そういう言い方もできると思います。
とにかく利己的で自分を中心にしか物事を考えられない為、他者の利益を尊重したり、相手も人格を持った一人の人間であるという認識がありません。
そのため非常に利己的な立ち居振る舞いをして周囲に悪影響を及ぼしますが、本人は自覚がありません。
ナルシシストは確かに自己肯定感は高いかもしれませんが、合わせて非常に利己的な思考回路を持っているため、他の人に害が及ぶことがあります。
一方、本当の意味で自己肯定感が高い人は他に害を及ぼすことはありません。
他の記事でも何度も書いてきましたが、男性は若いうちはみなナルシシストですし、女性は若いうちは共依存です。この二人がカップリングして「共依存関係」が成り立ちます。
女性は男性に尽くすのを止めて自分の為にお金、時間、エネルギーを使えるようになること、男性は自己中心的で利己的な言動を改め、愛する者を幸せにするために自分を捧げられるようになることが成熟への道です。
自己肯定感とは
自己肯定感とはありのままの自分を肯定的に捉えられている度合いを指します。完璧な人間などいないことをしっかりと理解し、完璧でない自分、弱点や欠けのある自分を丸ごと受け止め、受け入れ、それを踏まえた上で自分の味方になり、自分を支え、自分と共に生きる覚悟の高さのことを指します。
弱点を受け入れ守る
例えば、今まで何度も書いてきましたが、私にはそそっかしいところがあって、他の人達から見るとかなり大雑把なところがあるみたいです。
私はそういう自分をありのままに受け止め、受け入れているので、細かさや几帳面さや正確性を求められる職業には就かないようにしています。
そそっかしいとか大雑把ということは人間的欠点ではなく、むしろ弱点と言えるもので、努力で改善を見込めることではありません。私は生まれつきそういうタイプの人なんです。
そのことをちゃんと理解しているので、「それに合った生き方」を模索して、間違っても私のそういう部分を責めたり批判したりするような人たちとは付き合わないようにしています。
たとえ相手がパートナーであっても、私の弱点をネチネチと責めたり改善しろと言ってきたりする人とは決別して、むしろ一人でいることを選びます。
私は自分を責めたり否定したり批判したりはしませんし、何か失敗があったとしても受け止め、反省し、次にはどうしたら良いかを考えて、時間の経過と共に前へ進めるように努力します。
自分の感じ方を信じる力
自己肯定感とはまた、自分の感じ方を信じることができる強さを指す言葉でもあります。
他の誰が何と言おうとも、嫌なものは嫌、好きなものは好き、それを貫いて生きられる強さ。それが自己肯定感の高さです。
例えば、私はどうしても自分の両親に心から感謝するということができない人でした。「親に感謝しなさい」などと言われると、理由もよくわからないまま猛烈な不快感と反発を覚えていたものです。
後から心理療法や内観を通して判明したことですが、私の両親は子供たちに恩を着せるような言動を普段からしているような人たちでした。本物の愛情からではなく、義務感で子育てをしてきた人たちなので、「自分たちがこれほどの犠牲を払って育ててやったんだから、感謝されて当然」のような無言の圧力が常にあったのです。
当たり前のことですが、こういう圧力が強ければ強いほど、こちらの心は離れていきます。
当初私は自分の感じ方がおかしいのだと、自分を否定したり批判したりしていましたが、どうにも親に感謝したい気持ちだけは湧いてきませんでした。
「親に感謝なんてできない」という自分のありのままの感じ方を100%受け入れて肯定してからは、嘘のように気持ちが楽になりました。
「これだけしてやったんだから感謝しろ」と、当たり前のように見返りを求める親に感謝なんてできない。
それでいいんだ。
自分で自分の感じ方を100%肯定できる力。
それが自己肯定感の高さです。
これができるようになるためには、自分を良く知り、理解し、自分の一番の理解者かつ支援者であり続けることを心に誓う必要があります。
今では、何も事情を知りもしない癖に、したり顔で「親には感謝するものだ」と言う人には近づかないようにしています。百害あって一利ないからです。
自己肯定感とは、自分のことしか考えていない利己的な振る舞いや思考回路のことではなく、ありのままの自分を認め、受け入れ、それを支え、前をむいて成長していける強さのことです。
自己肯定感が健全に育っている人は、他者が完璧でないことも当たり前のように受け入れることができます。自分の好き嫌いに忠実なので、他者の好き嫌いも尊重することができます。
それが本当の意味で自己肯定感が高い人の在り様であり、それ以外の傍若無人な振る舞いは単なるナルシシズムです。
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