私は、日本人は「繋がり」や「絆」という概念が好きな民族だと思っています。近代では第二次世界大戦から今日まで、様々な逆境に見舞われるごとに、「繋がり」「絆」という概念がスローガンのように叫ばれ、強化されてきた印象を受けています。
相手と繋がれる力は、女性性が担っているものです。
逆に、相手と自分をしっかりと区別して明確な境界線を設け、互いの領域を侵害し合わないように適度な距離感を保つこと、つまり、必要なときに繋がりを「断ち切る力」は男性性が担うものです。
自分にとって害となる相手と縁を切ったり、立ち入ったことを聞いてくる人や過干渉な相手を遠ざけることは、健全に生きていくために必要なことです。
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繋がる力
相手の気持ちを思いやったり共感したり、言葉を発しない乳幼児や動物が必要としていることを察して世話ができる力は、女性性が持つ「繋がる力」です。
もっとわかりやすい言葉で言えば「優しさ」。
人は自分の気持ちを分かってくれる相手、必要なものを与えてくれる相手を信頼します。最初に相手が必要とする共感と理解を与えることで、相手と繋がれるのが女性性の力なのです。
この力がプラスの方向へ発揮されると、人は本当の意味での繋がりを感じ、自信を深めながらこの世を生き抜いていくことができます。自分は一人ではないこと、戻る場所(安全基地=つながり)があるという安心感を持って生きていくことができるのです。
しかし、「繋がりの力」がマイナスの方向へ出てしまうと、相手と自分の境界線が曖昧になり、互いに干渉し合ったり、立ち入った領域にまで踏み込んで相手と癒着してしまいます。
共依存の人は自分が不在なので、他者(パートナーや子供)と癒着して一体化することで生存を図ろうとします。要因は幼少期の過ごし方と、健全な男性性の欠如です。相手を自分の価値観で支配・コントロールしてしまうのは負の女性性です。相手が自分とは違う人格を持った別の人間であるという意識が希薄なのです。
子供を自分だけのものにしておくために(無意識のうちに)過干渉になって、子供の自律を妨げる母親などは、負の女性性の例です。
断ち切る力

一方、相手との関係性を断ち切る、相手を遠ざける力は男性性が担っているものです。
過度な繋がりは自分にとっても相手にとっても良いものではありません。
聖なる女性性が育まれるためには、まずは聖なる男性性(健全な男性性)を鍛えておく必要があるのです。
- 断る
- 自立する(相手に依存しない)
- 自分の責任を負う
- 他人の責任を負わない
- 区別する
- 突き放す
適度な強度でこうしたことを敢行できるのが、健全な男性性です。大切なのは、「適度な強度で」行うことで、行き過ぎればこれも「負の男性性」になってしまいます。
- 暴力
- 支配・コントロール
- 横暴
こうしたことは男性性がマイナス方向で出てしまったものです。
私の経験では、オランダやドイツなどでは男性性の力が強いと感じました。街中で出会った他人同士が世間話をする気軽さがあるかと思えば、馴れ馴れしく癒着したり、べったりと相手と仲良くなったりはしない。
基本他人には無関心。
「おもてなし」や「心づくし」が言われる日本とはほぼ対極だなと思うのです。
私は男性性6割、女性性4割の中性的な人間なので、男性性が強いヨーロッパの空気の方が気質的には合っています。
悩み相談で繋がりたがる日本人の女性からは「百瀬さんアッサリしすぎ」と言われることもありますが、立ち入ったところまで踏み込まず、問題解決は相手に委ねるというのは、健全な男性性なのです。
男性性と女性性の統合
私が見る限り、日本は共依存の人が多く、相手と癒着しているケースが沢山あります。過干渉になったり、自分を犠牲にしてまで相手に合わせることを優しさだと勘違いしている人も多いです。
人生をある程度健全に生きていくためには、男性性と女性性をバランスよく健全な方向へ発揮できる必要があります。
相手との繋がりを断ち切ることは、最初は「さみしい」とか「冷たい」と感じるかもしれませんが、それは「自律(自立)」には必要な通過儀礼なのです。
さみしさと共存することを覚えない限り、人間は自分を守りながら相手を大切にすることを学べません。
男性性と女性性の統合についてはE-Bookにまとめていますのでご参照ください。
多くの日本人には境界線がありません。境界線の概念をしっかりと学び、相手と自分との間に適切な距離を保てるようになるためには、「繋がる力」と「断ち切る力」の両方が必要なのです。
境界線についてまとめた E-Book はこちら。
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