興味深い動画を見つけましたのでシェアします。
「仕事ができない部下をどう教育したらいいですか?」という質問に対して堀江貴文さんが「部下育成はしたことない」と答えている動画です。
ご覧になるとわかると思いますが、内容はグダグダです。
堀江さんが仰りたいことは何となくわかるのですが、ご自身がまだこの問題の本質をとらえきれておらず、うまく言語化できていないとお見受けします。
ですが私にはこの動画がとてつもないネタの宝庫に見えたんです。
そこでこの記事では、この動画で語られていた特筆すべき点を私の切り口から掘り下げていきたいと思います。
「仕事ができない部下をどう教育したらいいですか?」という質問に対する私なりの回答は最後に書いてありますので、興味がある方は読んでみてください。
動画をご覧になってから読むとわかりやすいかも。
日本にはびこるファシズム
部下の教育について質問です。理想は、自分で課題を見つけてどんどん動いていけるように育って欲しいのですが、そんなのは夢のまた夢、現実は自分の仕事のスケジュール管理もままならず、しつこく言ってもなかなか直りません。注意しても少しふてくされる最近の若者なので、あまりこちらから言いすぎるのもと思い、指導に困っています。堀江さんはライブドア時代など、どのように部下を育成していましたか?(ホリエモンチャンネルより引用)
私も若かりし頃、上司から「俺が立派な営業に育てるから」と言われてメチャクチャウザかったことを思い出します。
基本こういうことって、双方が同じ方向(ベクトル)を向いていないとまったく嚙み合わないものです。「クビにならない程度に働ければいいや」と思っている部下と「自主的に動いて欲しい上司」では、合わないのは当然でしょう。
ブログの中でも書いていますが、日系企業の本質はファシズムで、「部下を自分(たち)の思い通りに動かそうとする」ことをなんとも思っていないです。
「他者を変えようとしてはならない」ということを知らない、つまり、無知なんです。
従業員が会社の利益に貢献するために働くのは大前提です。企業側の理念や価値観から大きく逸脱したような振る舞いをする社員に上司が指導するのは当然ですし、新しく会社に入った人に仕事のやり方や一応の会社の方針などを教えるのも普通です。
ですが日本の企業で働く人が使う「育成」とか「教育」という言葉はそういう意味で使われているのではなく、「相手を自分の都合の良いように変える」ことをそのような言葉で表しているだけ。
そこまで明確に自覚していなくても、根底はそれです。
質問を翻訳すると、「私は部下を自分の思い通りに動く人間に変えたいのだけれど、相手はなかなか変わりません。変える方法を教えてください」なわけです。
それは慈愛や理解を必要とする「教育」や「育成」とはなんら関係ない、相手を自分の思い通りに支配・コントロールしたいというファシズムそのもの。相手を一人の人間として尊重する意識があれば絶対に出てこない質問です。
日本という国全体にその自覚がないだけなんです。
関連記事:
直感的にそうしたやり方に違和感を覚えていらっしゃる堀江さんは、
「教育とかってできるの?」
「考えたことないけど、それやっても楽しくないじゃん?」
「指導とか教育とか、ふてくされるとか、そういうんじゃないんだよなぁ」
と仰っている。
部下を教育(洗脳)することはできない
結論はそれです。
私たちは他者を変えることはできません。相手が変わるのは、本人が変わりたいと思ったときだけ。当たり前すぎるほど当たり前のことなんですけど、日本人が「教育できるし、するべき」と思い込んでいるのは、根底にファシズムがあるからなんです。
ちなみに逆の見地から論じた記事はこちら:
他者を変えることはできない。
だからこそ、
組織には同じベクトルの人が集まった方が良い
と堀江さんは仰っているわけです。
同じ(似たような)理念や方向性を共有できている者同士であれば、それほど大きな齟齬は生じにくい。
例えば、当サイトの基本理念は当サイトについてに明文化してあって、その理念に共感できる人だけにサイトに戻って来て欲しいと私は思っています。「少しくらい孤立しても自分らしく生きること」を信条としている私のところに、「孤立したくないから波風立てずに穏便にやりたい」という人が来ても、目指すものが違いすぎるためにいい関係性は築けません。
私がその人の在り方を変えることはできないんです。それよりも、最初から「少しくらい寂しくてもいいから自分らしく生きたい!」と思える方たちだけに来て欲しいと思っている。そうすれば相思相愛でうまくマッチングするのです。
スクリーニング(フィルタリング)は必須
動画の中で「一万円フィルター」という話が出てきましたが、少なくとも自分で何等かの仕事をしている人であれば、多くのフィルターをかけて集まる人をスクリーニング(フィルタリング)しているはずです。
当サイトでもフィルターは沢山使っていますし、セッションには「一万円フィルター」使っています。
セッション1時間3000円にすればもっと申し込みは増えるでしょう。でもそれでは意味がないんです。私とは合わない大勢の人が来ても、トラブルやストレスが甚大で私がつぶれてしまう。自己変容にコミットし、1万円払ってでもこのセッションを受けてモノにしたいという覚悟がある人だけに来てもらいたい。
様々なフィルターをかけて、最初から相性の良い人たちだけが来てくださるようにしているのです。
本当の意味での教育や育成とは
いみじくも、この動画のコメントの中に名答がありました。
育てると教えるは違うんだけど、それを分かってない人多い気がする。 教えるなんて本当に新入社員の時だけ。 対して育てるは、機会を与えたり、失敗を容認したり、発信の場を提供したり、 要は手とり足とりで無くて、組織として環境を整えることであって、これは永続的に行うもの。(ホリエモンチャンネル コメント欄から引用)
本当の意味での教育や育成を行えるためには、健全な母性と父性がバランスよく体現できている必要があります。
相手の欠点や弱点を優しく受け止めて、失敗することを許し、必要な指導と助言を与えて方向性を示し、環境を整えて成長する機会を与え、長い目で相手の成長を見守る姿勢を示すこと。
それが本来の意味での育成です。
職場だけでなく、家庭でも学校でもこれが行われている必要がある。
けれども現実的には多くの未熟な人たちが、子供や他者を自分の思い通りに操作しようと躍起になって、思い通りにならない相手を否定したり責めたり批判したりして「懲らしめる」ようなことが横行している。「どうしたら相手を変えられますか」と質問してしまう。
この質問がはらんでいる社会問題はとても深いです。
「仕事ができない部下をどう教育したらいいですか?」という質問に対する私なりの回答は以下の通りです:
部下を教育することはできない。まずはなぜ相手を変えたいと思うのかを解明すること。その上でファシズムと上下意識(相手を自分よりも下とみる意識)を手放し、他者を一人の人間として尊重する意識を身に着けること。一生懸命にそれに取り組めば、「部下を変えたい」という気はなくなるでしょう。
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